中日新聞
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毎日新聞
(H8 7/24)
静岡新聞
(H8 7/4)
毎日新聞の記事内容
脱サラした津軽三味線奏者、白井勝文さん47(静岡市瀬名)を3年問追いかけた
フリーカメラマン、金井紀光さん45(同市両替町)がこのほど、写真集「べんべん
会社を辞め、三味線弾きになった男」(碩文社、3000円)を出版した。白井さんは
公演活動で生計を立てているが、あえて路上にも飛び出し演奏「修業」をしている。
津軽三味線の持つ叫びに似た響きに、足を止め、驚く子供の表情。目を閉じお腹
に手をあてて聴き入る妊婦。金井さんは、津軽三味線の音を挟んだ演奏者と通行
人の心の動きの一瞬をシャッターで切り取っている。
【堀山明子】
白井さんは、大手音響メーカーに25年間務め、5年前に選択退職。「長年の夢だった」
津軽三味線演奏家に転身した。25歳で生の音を聴いて衝撃を受け、テープの旋律を耳
で拾って練習した。農民の困窮、飢え、死。「津軽三味線には死と背中合わせのどうし
ようもない悲しみと、供養の思いが刻み込まれている」。その響きに、なぜか自分の心
も救われる感じがしたという。
静岡市丸子の大だたら不動尊参道で演奏をする白丼さんのうわさを聞きつけ、金井さ
んは、「雑誌のグラビアぐらいにはなるな」と軽い気持ちで取材を申し込んだ。ところが
「自分の腕一本で独立しようとする生き方」に魅せられ3年間で延べ100カ所も同行す
ることに。
一方、「人間の内面」に焦点を当てれば当てるほど、参道のブロマイド的な構図に物足
りなくなった。1年たって金井さんは、「聴衆の反応を撮りたい」と静岡市の中心街、青葉
通りでの演奏を提案。今回の写真集実現につながった。
最初は2人とも「こんな泥臭い世界が通じるものか」と半信半疑だったが、路上では若
い人の反応が良く、握手を求める人、涙を流す人もいた。
関心を示すのは子供、若い女性、カップルの順。ほとんど無視して通り過ぎたのは背
広姿の中年男性だった。金井さんは「社会の常識やレールに乗っていると精神的余
裕がなくなり、大切なものが見えなくなる。<心の盲目>とは何か、津軽三味線に純真
に興昧を示す子供の表情から逆に観えてくるのではないか」と話している。
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